こんばんは。今日は僕がこのブログでよく言っている木を割らない彫り方や、木の目に沿って彫ることについて話してみたいと思います。初心者必見の木彫の基礎です!
木を立体的に彫るにあたって必要になる木材の基礎知識。
多くのサイトで紹介されている木の彫り方は浮き彫り(レリーフ)の話です。ここでは奥行きがあって正面から背面まで、360°三次元の立体を彫る「丸彫り」について説明してみます👍
僕は美術系大学の彫刻科出身ですが、実際木彫の実習で習ったことは今日話すことくらいです。あとは道具の手入れとか、チェーンソーの安全な使い方とか。木の継ぎ方とか。
実際の具体的な彫り方って、決まったやり方が無いし何が正しいと言い切れない世界なので、説明のしようがないんです。美術ですから、ケガや事故がなければどんな彫り方をしても大丈夫なのです👍
ただ扱うものが木である以上、木の特性を理解しておけば木彫にありがちな失敗を防げるし、早くきれいにできるのも事実。
習ったことはもちろん、僕が経験で学んだことのうち、特に初心者さんにとって重要だと思うことも書きます。
それではGo🚗
基本その一。木口から外側に向かって彫らない
丸太の状態の木を水平に輪切りした断面を木口(こぐち)と言います。
その木口を縦に割った断面を、青矢印のように真横から見たとしましょう。

下図のように年輪が縦に走って見えます。上が木口面になりますね。
このとき、赤矢印の方向にノミを進めて、青い点線のように45°彫り落とそうとすると失敗します。

実際にはこのように、木目に沿って木が縦に割れちゃうのです!

彫らずに残しておきたいところまで一緒になくなっちゃいました😥
やり直しが効かない木彫ではこれが致命的💥
もし、青点線のように彫りたいときは逆に下から上に向かって彫らないといけません。
つまり、 木口面を木の中心から外側方向に向かって彫ろうとすると割れやすくなります。必ず、周辺から中心に向かって彫るようにしましょう。
木の外周に沿って180°横方向へ彫るのもOKです。(厳密には、「優」ではなく「可」という感じ。後述のように木肌がきれいに仕上がらないから)
実際の木材でおさらい
下の写真では左向きの面が木口ですね。なので青矢印方向に彫ります。

一方下の写真では木口面が上向きになるようにしました。

木材を手に入れたら、最初にどこが木口面か見分けるのが大切。そして、彫りたい形をどの向きに配置するか考えます。これが木彫制作の一番初めにやることです。
基本その二。溝は両方向から彫る。
例えば下図のように、青点線に沿って半円状に彫りたいとき。赤矢印のように一方向から彫ろうとすると…

刃が上向きになったとき割れます。これ、結構やっちゃうんですよ。やると悲しみます😭
「え、どういうことですか?ですよねー、そうですよねー。あーあ…(泣)」
こうならないようにするには、図の右方向から斜め下に向かって彫って、底まで彫ったら反対に左方向から彫って、溝の底でつながるようにします。
で、実際どのくらい割れやすいかは木の種類によります。ちょっとでも割れる彫り方をやると容赦なく割れる木もあれば、その辺が多少適当でも許してくれる木もあります。そんな、比較的寛大な木のことを「粘りがある」といいます。はいここテストに出まーす👨🏫
一般に針葉樹は粘りが少なく(割れやすく)、広葉樹は粘りがあるよ!
僕の経験則です。どういうわけか一度割れた場所は癖になってしまい、後で彫ったときもまた割れやすくなります。どんどん小さくなってしまうということ😥
もう割れてほしくないときは割れた部分をきれいに均してあげると割れにくくなります。
基本その三。割れやすさを逆に利用する
前にレイちゃんを彫ったときに紹介したお話です。ブログ始めたばかりの頃の記事です👶
下の記事で「はつり」として紹介している方法。手っ取り早く荒彫りするときの方法です。
さっきのおさらいで、木は木目に沿って縦に割れるのでした。なので、事前に横方向に切り込みを入れておいて、わざと割れやすい方向に縦にノミを打つと、思い通りの形に割れてくれます💡

この時、横挽きののこぎりを使います。のこぎりの縦挽き横挽きの違いはこちらの記事を見てね。

横方向の切り込みは作品サイズにもよりますが上の作例では2センチ前後の間隔で入れてます。材の大きさは18×12×30cmです。
小さい作品の時と、切り込みが浅いときは間隔を狭めます。その辺の勘はやって覚えて💦
CM入ります!
基本その四。順目逆目を理解する
これについては、原理としては今までとかぶる話ですが、木肌という観点もあるので新しく説明し直します。
木を彫るときの刃の進め方には順目と逆目があります。順目という字。僕は「じゅんめ」と読んでましたが「ならいめ」とも読むらしいです。実際には逆目(さかめ)の方が圧倒的によく使う用語なので気に留めてなかった😃
木目に逆らわずに順目で彫ると木肌が滑らかで光沢を帯び、紙やすりで磨かなくてもきれいに仕上がります。逆に逆目は繊維がむしり取られるように荒れた彫り跡になってしまいます。
実際の写真を見てみましょう。
ヤマザクラの場合
下の写真で三角形の彫り跡がありますね。ヤマザクラ材に順目でのみを入れたところが、きれいに光ってる様子です。

同じ材の別写真。順目と逆目の写真です。参考までに割り肌(木を割いたときの状態)も載せておきます。

矢印のように画面左から右に彫ると逆目に、右から左に彫ると順目になります。
逆目で彫ろうとするといちいち刃が引っかかって、そのたびに割れそうになります。割れそうなところをさらに力づくで刃を進めると割り肌が現れます。ヤマザクラは割れやすいんです。
ヒノキの場合
もうひとつの例として、檜材のサンプルも乗っけときます👇
左から右が逆目、右から左が順目です。檜は順目で彫るとめっちゃきれいです!かんな掛けしたみたいでしょ?

仕上がりが全然違うので、できる限り順目で彫りましょう。
順目逆目を見分けるときは、材を別角度で見て、木目の方向を見ます。でも正直言って、実際彫ってみてきれいな彫り跡が出る方が順目だ!という判断が一番信用できます。木目は曲がるので。
どうしても逆目で彫らなきゃいけないときは
できるだけ木肌の荒れが少なくなる方向にスライドさせて刃を進めます。刃の進む方向が刃のついている方向と平行に近くなるようにします。彫るというより切る感じ。
図にするとこんな感じです。

また、刃物がよく研げていると逆目でも荒れにくくなります。
木の個性。
木には個性があるので、このようにわかりやすい例ばかりではありません。樹種レベルの個性、個体レベルの個性✨
まっすぐ木目が直線の木は存在しません。大きく曲がりながら伸びた材もあります。木の節ができていると、部分的に目の方向が変わります。
ちょっと実例を見てみましょう。

材を面取りでカットしたら、青で囲んだところに節が出てきました。この節は木材本体と直交するように走っています。
本来であれば下図の青矢印の方向に彫ればいいのですが、節の周辺だけは節の中心に向かって、つまり赤矢印の方向に彫り進めないといけませんでした。

このような節の例ばかりでなく、丸彫りは浮彫と違って様々な角度から彫るので、状況によって順目逆目が頻繁に変わります。
このため、さっきまで順目で進めてたはずなのになんか逆目っぽくなってる…、ってことがよくあるんですよ。
いかにも職人言葉っぽいですが、木の目は木に聞け、ということでしょうかね…🤔
基本その五。木肌を整えて仕上げる
またまたさっきの話と関連しますが、木彫は仕上げがちゃんとしてないと目立ちます。
ノミ底の仕上げ
その二のところで説明した、溝は左右両方向から彫ろう!の話に戻ります。
約束通り両方から彫りました🎵すると真ん中に不自然なささくれができます😭

昔は気にしてなかったんだけど、うさぎのように小さな作品を彫るようになると、これが目立って気になりだしました。改めて上手い職人さんの仕事を見ると、みんなここをきれいに仕上げてます✨
のみや彫刻刀で溝を彫っていって、溝が一番底にきて上向きに切り替わる境目。目立つささくれは丁寧に取りましょう。ここがきれいだと見栄えがいいんです❗
木口の荒れ
次に気になるのが木口の仕上げ。木口面はどんな木でもめちゃくちゃ硬くて彫りにくいです。そして、下図のように小さく穴が開きます。

これが困ったもので、荒彫りだから(まだ深く彫るから)いいや、と思ってると、思ったよりも穴が深部まで到達してるときがあります。穴を消すために彫ったらまた新しく穴が開く、なんていたちごっこも😭
彫っても彫っても穴が消えないので諦めて穴が残ったままにするか、根本的に形を彫り直すかの二択になります…。
木口の仕上げはみんな手を焼きます。最も簡単なのはやすり仕上げにしちゃうことです。彫ったまま仕上げるときはよく研いだ刃で優しく彫るしかないです。大きな道具と強い力で彫れないので効率は悪いです。
切り立てた側面の仕上げ
この話は浮き彫りでも当てはまります。例えば下の鉛筆の線に沿って彫りたいとき。

最初に輪郭に沿って切り込みを入れて、斜線部分を平のみなどで落としていきます。
一度に目的の深さまで彫れないので、輪郭の切り立て→周辺の彫り込みを繰り返すのですが、その断面がこのようになります。

なんというか、ミルフィーユ状に、側面が段々模様になるんです。切り立て→彫り込みの回数が多いほどこうなります。これも結構気になります。
ミルフィーユ。おなかすいてきた。デニッシュも食べたい😋
切り立ってる側面も、小さな彫刻刀できれいに整えたいもの。もちろん順目を意識して。上の写真だと左から右方向に刃を進めるときれいにできました。

まとめ
以上、木彫の一番の基礎についてお話してきました。僕は美大でちょっと勉強したくらいなので、伝統の職人さんには及びません。
ですが最低限この知識があれば好きな形に木彫りができると思います。
冒頭でお話したように、逆にこれくらいしか習わなかったし教えることもないくらいなので、思ったより木彫りのハードルは低いかも❓
くれぐれもケガだけは気を付けてね❗❗
というわけで今日の記事はここまでです。文末に道具関係のリンクもつけておきます。
それではみなさん、次の記事でお会いしましょう!バイバイっ!
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