鉄のやすりよりも紙やすりの方が早く削れる時がある!?木材の研磨は奥が深いです。今日は木をピカピカに磨くやり方を実際の制作過程を追ってまとめました。
木も磨くとツルツルになります♪
木にはいろんな種類がありますが、中には磨くととてもきれいな木材があります。
冒頭の画像は黒檀という木です。下の写真は槐(エンジュ)の木を磨いた様子。
着色やニス塗りはしなくても、このように自然な風合いの艶が出ます。
今日は木を磨くための道具の紹介から、実際に磨く工程まで解説してみます。
この記事では手作業でキレイに磨くやり方の解説をしています。電動工具が使える作業場が欲しい😭
必要な道具
万力、専用はさみ、木工やすり、紙やすり、平らな作業台もあるといいです。作業台の理由は後の実践編で説明しますね。あと、防塵マスクは必須。
万力(バイス)
小さなものをやすり掛けする時、あると作業がだいぶ楽になります。
この型のように、机に固定できて、挟む部分にゴムのカバーがあるやつが木彫り(特に小さなもの)には向いています。
広告させてもらった商品はあくまでも、「ホビー」バイスですので、ちょっとした小板を挟むとか、軽作業専用にしましょう。僕はこのバイスで挟んだ木材をノミでガンガン叩いて、根本から折ってしまいました😭
これ以上高いちゃんとしたやつはとっても重いし、机などにボルトで固定して使う前提の作りですが、もちろん机は別売り。用途に応じて道具を選べるようになるのが職人の第一歩です✨
こういうミニクランプも必需品。同じものを2~4個持っておきたいところ。木工用で十分です。
木工やすり
やすりには木工用と鉄工用、プラスチック用などがあります。荒目のやすりの場合、鉄工用だと目が細かすぎるので木工用を買うのがおすすめです。
形は平やすりを一本持っておきましょう。必要に応じて、丸やすり、半丸やすりと揃えていけばOK。
紙やすり
紙やすりには番手があり、数字が大きくなるほど目が細かくなります。僕は60番、120番、240番、400番を使います。
荒い番手からだんだん細かいのに替えて磨くのですが、次の番手の数字が2倍を超えると作業量が多くなります。
60→120→240→400や40→80→160→320と作業を進めていくのがいいですね。
紙やすりの種類は、木工用としては一番安い茶色いやつで十分です。
黒や灰色の布やすり、耐水ペーパーやすりは研磨剤が木に入り込むと汚れるので避けてます。
ある程度粉塵、騒音に耐える作業場がある方は、電動工具で磨くこともできます。このように市販の紙やすりを取り替えて使用できるタイプが便利。
紙やすり専用はさみ
紙やすりは好きな大きさにカットして使います。この時、はさみで切ると刃が傷ついて使えなくなってしまいます。
なので、ちぎるように切るか、僕のように普通のはさみを紙やすりのカット専用にしちゃいましょう。僕が使っているはさみは、もう紙は全然切れませんが紙やすりはちゃんと切れますよ。
防塵マスク
買ってください。あなたの健康のためです。
趣味の木工程度でじん肺になるリスクは低いかもしれませんが、僕はマスク無しで作業して気分が悪くなったことがあります。使い捨てタイプは密着感が弱いのでフィルタ交換型のマスクを買いましょう。本体がせいぜい2000円程度ですから。
※花粉症にも効果絶大😷 春先の屋外作業に是非。
僕が持っているマスクには「国(’20)検第TM203号DR直RL1」とシールが貼ってあります。
上のリンクの商品も同型を検索して出しました。変な安物を買わないようにしてくださいね。あと防「毒」マスクではないので注意。溶接ガスや有機溶剤などは防げません。
磨きに向いている木
黒檀 紫檀 花梨 ヤマザクラ ウォールナット等、密度感がある木材は光沢が出やすいです。目安として、見た目より重く感じる木(比重が高い木材)は磨き甲斐があります。
先日パドックの木片を入手して磨いてみました。鮮やかな赤い木です。
この木も磨くときれいですね✨
木の種類について記事を書いたので覗いてみて。
では、次から実践編に入りましょう!
木材研磨:実践編!
ではでは。磨き方の説明を、実際の作業手順を見せながらやってみます。
ちょうど手元に黒檀の端材があるんで、磨いてみます。
黒檀はとても堅く、切断面は磨く前から黒光りしてます。
まず、のこぎりで切る。
作りたい形に合わせて大まかに直線でカットしちゃいます。
この木片は親指くらいのサイズなんですが、万力でしっかり固定しないと、のこぎりの刃が引っかかって全然切れません。小さな加工物は持つ所が少ない上、自重もないので、いかにしっかり固定するかが効率に直結するんです。
やすりがけ
固定の重要性
やすり掛けでも素材の固定が重要です。
ここで冒頭の話。紙やすりを使った方が早く削れる話です。
百聞は一見に如かずですね!下の動画を見てください。(音ありです)
(わかりやすくするため素材を手に持ち、浮かせて削ってます )
素材を固定せずに木工やすりをかけようとしても、やすりを押し付けて動かしたときに素材も一緒に動いてしまうんです。
また、やすりの刃が木に食い込んで動かなくなることもあり、全然削れません。やすりの目が粗いほど摩擦力も強くなるんで、やすりが進まなくなります。
やすりが食い込んで引っかかってしまうのを、手の力で抑え込もうとすると無駄に疲れますよ💦
つまり、抵抗が強いときほど、より強い力で固定する必要があるんですね。
抵抗が少ない紙やすりを使った方が手の力で十分に素材を固定できるので、早く削れることがあるのです。
僕は万力を使うまでもないほどの微修正の時に、荒い紙やすりを使って形の修正をやることがあります。
ですが、ガッツリ削りたいときは素材を固定するのが基本。この重要性、伝わりましたか?
基本的なやすりの使い方
さてやすり掛けの基本です。やすりは押して使う道具です。
今誤変換で「やすりは推して使う道具」と出ました。うちのパソコンはやすりを何だと思っているのでしょう。
さてこの時、木口を包むようにやすりを進めます。木口は木の輪切り断面のことです。
下の写真のように左下方向にやすりを進めると、角の所がささくれて剥がれちゃいます。
反対方向、写真左下から右上に向かってやすりを進めれば大丈夫です。
彫刻刀などで彫るときも同じです。このことを知らなかった方は下のリンクを参考にしてね。
先ほどの黒檀、やすり掛け作業が終わりました。
紙やすりで磨く
ここからは紙やすりで、やすりの跡を消して光沢を出していきます。
紙やすりには番手がありました。僕は各番手に役割のようなものがあると思ってます。まず60番は形作り、120番は形の締め、240番は色出し、400番はつや出しといった具合です。
紙やすり60番
前工程のやすりの削り跡を消しつつ、やすりではできなかった細かい形を作っていく工程です。
60番の紙やすりは荒いので磨いているうちにどんどん削れて形が変わってしまいます。特に平らな面を作るときは注意⚠
下の写真、黒檀とウォールナットの木を磨いたのですが…、
左の黒檀は画面左下からの光によって、均等なグラデーション状のツヤになっています。
それに比べて、右のウォールナットは光の当たり方が偏っています。ツヤの部分が極端に強く光っていて、急激に暗くなる感じ。実際に現物を角度を変えながら見ると、よりはっきり違いがわかります。
なぜでしょう❓
ウォールナットの方は平らになるべき面が丸みを帯びてしまってるからです。
さっきの写真のウォールナットの棒を別角度から見るとこのようになります。赤で正方形の画像を重ねたとき、微妙に辺が曲線になってるのがわかりますか?
手作業でやすり掛けをすると、やすりを動かすたびに微妙に工具を当てる角度がずれてしまうため、どんなに気を付けていても平面が曲面になってしまいます。それが光沢感の違いになり、不自然なツヤ感になるのですね。僕はこれがけっこう気になります。
紙やすりに当て木をしても、電動工具でも、完ぺきな平面を作るのは至難です。
古代ギリシアのエンタシスのように、あえてそうする意図がない限り、形が曲面になって膨らむのは避けたいです。
そこで…
平らな作業台に紙やすりを敷いて、その上に素材をこすりつけて磨きます。
経験上、この方法なら平面が丸くなるのを最小限にできます。
ただし広い面を均等に削ることになるんで、傷を消すのに時間がかかります。素材が大きければなおさら。根気強くやりましょう。
逆に、曲面を削るときは自分の手や指で紙やすりを持って磨くのがいいみたい。自然で柔らかな丸みが出ます。
下は60番まで磨いた状態です。
紙やすり120番
120番までは素材の形が変わります。形が変わっていないか注意しつつ、60番までの傷を消します。
下の画像の左半分は120番まで磨き、右半分は60番で磨いたままの状態。
わかりやすくこうしてますが、偏った摩耗になるので後で全体に均等に磨き直してます。
120番終了後↓
紙やすり240番
今回の例では黒檀なんで真っ黒ですが、一般的な木材では240番まで磨くと、白っぽく見えていた木の表面に素材本来の色が出てきます。
また半分半分の状態。
ところで、この段階あたりから、前工程で消えなかった傷が目立ち始めます。
深い傷が見えてきたら躊躇せず前段階に戻ることが重要です。120番で楽に消える傷を240番で頑張って消そうとすると大変ですよ。
木彫の考え方として、
240番よりも120番の方が早い、
120番より60番の方が早い、
60番よりもやすりが早い、
やすりよりも彫った方が早い、
彫るより切った方が早い、
です。今までの労力にこだわらずに、あっさりとやり直ししましょう!
240番まで磨くと手触りがすべすべで気持ちいいです。
紙やすり400番
金属を鏡面になるまで磨くには耐水ペーパーで1000番、2000番まで磨く必要がありますが、木材の場合は400番まで磨けば十分です。実際、木材用の紙やすりは400番までしか売ってません。
それ以上艶を出したいときは紙を押し付けて磨くか、オリーブオイルを少量つけて拭けばかなりピカピカになります。
というわけで400番をしっかりかけてみます。
写真で見た感じ、左右で変わらなくなってきました。磨きも大詰めですね!
紙やすり800番
上述の通り400番までで十分ですが、今回使用する黒檀は木材として緻密で磨きに向いているので、800番までやってみます。耐水ペーパーやすりを使います。
紙やすりは摩耗してくるにつれて番手が上がったような状態になるんで、あくまでも参考程度に左右の磨き分け写真を載せときます。
800番まで磨きました。
仕上げの艶出し
きれいな紙に木を押し付けてこすると艶が出ます。上述の通り、400番まで磨いた後でこの工程に飛んでも大丈夫です。ただ艶が出てればよい、くらいの目的なら240番から紙磨きに行っていいくらいです。
きれいな紙を使わないと磨いているうちに傷が付くので注意して、ほどほどにしましょう。
というわけで、完成がこちら!
画像小さくまとめてみました。がんばったー🎵
おわりに
木の磨き方を解説してみました。磨きって凝るとハマるんですよねー。ただ、木彫の磨きは本気を出すと彫るのと同じくらい時間がかかります。根詰めてやると体壊しますんで、おおらかにやりましょうね。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。最後までありがとうございました。
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