刃物の画像があります。ご注意ください。
こんにちは。ティムです。今回は木彫りの中でも比較的簡単な浮き彫りのやり方をご紹介します。
浮き彫り(レリーフ)を彫って木に親しみましょう
浮き彫り(レリーフ)はコインやアクセサリーなど、身近なところでもよく見かけます。彫刻の一ジャンルですが、作るときの考え方は立体の彫刻とだいぶ違います。
今日ご紹介する方法は家庭でもできる簡単な木彫の浅浮彫の作り方です。
木という素材に慣れるためにも、初心者の方は浮き彫りから始めてみてはいかがでしょうか?
素材や道具
素材
今回は朴(ホオ)の板を彫ります。はがきサイズで厚みは10mmです。
この材は東京・新木場で仕入れてますが、このくらいの大きさならハンズやホームセンターなどで手に入ります。
素材は朴のほかに桂や檜(ひのき)が彫りやすいと思います。
道具
のみ・彫刻刀
僕は立体の彫刻をやるときと共通の道具を使っているので、参考程度に。
幅15mm程度の平のみと、幅10mm・3mmの切出刀が一本ずつあれば大体の形はできます。幅5mmくらいの丸刀(カマクラ刀、右から二番目)は毛並みの線を彫るときに使っています。
他には、仕上げにサッと磨くための紙やすり(120番くらい)を使います。
水彩絵の具
着色は控えめに。木の質感を生かす透明色の絵の具です。
耐水性はありませんので、必要ならアクリル絵の具に変更しましょう。
その他の道具
彫るときは作品をしっかり押さえないと作品が動いてしまい、力が逃げてしまいます。
そのために作業板の上で彫るといいです。
僕は使い古しのまな板を使っていますが、木版画用の作業板もおススメです。
出っ張った「へり」の部分に作品の板をひっかけて固定できます。
意外と大切なのは照明器具。
浮き彫りは表面の凸凹が作る微妙な陰影をコントロールして形を作るので、好きな位置に光源を移動できるアームライトが役に立ちます。
汗拭きタオルも使います。
手袋は滑って危ないし、タオルに落ち着きました。
汗で作品が汚れてしまうと美観を損ねます。(何よりお客さまにとっては、オッサンの汗が浸み込んだ木彫りなんて絶対買いたくないよね🤣)
制作編
ではさっそく、どのように作っていくか見ていきましょう♪
モデルはホーランドロップのこむぎちゃんです💕
まあるいおでこ、最高にかわいくないですか⁉🥰
ここから、このような作品を彫っていきます✨
材の状態チェック(木取り)
木材の傷がある場所を避けたり、色の違いと彫りたい形とを照らし合わせ、木を使う向きを決めます。
木材の種類にもよりますが、多くの木は輪切りにしたときの外側部分(辺材)と中心に近い部分(心材)とで色が異なります。
なので、辺材との境目にお顔がかからないように取りました。
一般的に木材は色が濃い方、または赤みが強い方が心材で、そっちの方が身が締まって質感がキレイ。なので大事な部分には心材が多く入るように取れるとベターですね🎵
木の目の方向については、あまり気にしなくていいです。というのは、全方位から彫りやすい取り方はできないし、木に合わせて自分の方で刃の進め方を変えれば済むことなので。
鉛筆で下描き
彫りたい形を鉛筆で描きます。さっきは簡略化した絵でしたが、背景も含めてきちんと描いた状態がこちら↓
背景の上の方はアーチ形に窪ませて彫る予定です。手前の部分は抽象的に彫ろうと思います。
続いて、いよいよ彫刻刀を使って形を彫っていきます!
輪郭の切り立て
太い切出刀を使い、うさちゃんの外側の輪郭に沿って切り込みを入れます。
目鼻や、あごのラインなどは後回し。ベタっとシルエットとして見たときの外側の輪郭を刻みます。
このとき、できるだけ木の表面に対して垂直に刻みを入れるように注意しましょう。
このとき、きっと皆さんが想像している以上に深くまで力を込めて彫ります。輪郭線からズレないことも大事ですが、深さもとても重要✨
力の入れ方のコツ
彫刻は「彫る」ものですが、「掘る」意識で下に向かって刃をくい込ませるようにして輪郭線を刻んでいきます。
体重をかける感じで深く刃を埋め込みます。極細の刀を除く、ちゃんとした彫刻刀ならこの程度のことでは壊れません。
深く彫る意識はケガの防止にもなります。
なんだか理科の勉強みたいな図になっちゃいました。矢印で合力とか力の分解とかを描くやつ、子供の頃やりましたねー📐
赤矢印が青矢印よりも長くなると、勢い余ったとき刃が思わぬ方向に飛び出してケガをします。下方向の力(青矢印)が強ければ、手を切る方向に刃が滑る心配が少なくなります。
肘関節をできるだけ使わないのもケガを防ぐコツです。
肘は一番コントロールが難しい関節のようで、ハサミを使うとき脇を締めるのも肘の可動域を減らすための工夫です。肘ってブレーキが効かないんですよね。怖いです😱
木工職人さんや印鑑を彫る職人さんは、下の画像のように刃を構え、親指をあてがってテコの原理のように動かして彫っているみたいです。
これもケガしにくい方法ですね!
周囲を彫り下げる
輪郭線を刻んだら、残したい部分の外側を窪ませます。
さっきよりも小さめの切出刀の方が抵抗が少ないので楽です。
先ほどは肩と上体をメインに使いましたが今度は指関節をうまく使って彫ります。
こんな風に、手の平をしっかり作業台の上に押さえつけつつ、指を伸ばしたり引っ込めたりして彫っています。
これなら、どう転んでも指の長さ以上に刃が進むことはないので安心して彫れます♪
木彫りは広めたいけど、みんなにはマジでケガしないでほしいんよ。どうかご安全に👷♂️
下の写真のように細かく入り組んでいる場所は残したいところをうっかり彫らないよう気をつけてね。
あと、彫りカスがくっついてしまったら無理に引っ張らないで。大事な部分もはがれてしまうかも。
ここまでの繰り返し
ぐるっと一周彫り終わりました。
まだまだ彫りが浅いです。
うさぎさんのシルエット部分が目的の高さに浮き上がって見えるまで、輪郭の刻み→周囲の彫りを繰り返します。
ようやく目的の深さになりました。今回は板厚10mmに対し、彫りの深さ3~4mmくらいです。
シルエットだけを集中して彫ることで、背景からうさぎさんが浮かび上がって見えるようになりました。
背景を彫る
背景部分にできた角を落とすように滑らかにします。
早い話ここを…↓
こうします↓
15mmの平のみを手で押しながら彫っていきました。(本当は、「突きのみ」と言って、手で押して使うための専用の道具があります。僕は持っていないので柄を叩いて使う「叩きのみ」を代用しています)。
今度も、上体を使って体重をかけながら彫り進めました。
全体を彫り終えるとこのようになります。
輪郭の角を彫る
さっきは板の表面に対して垂直に彫っていきました。このままでは立体感を感じられないので、角を落とす要領で丸みをつけていきます。
前の工程で刻み線→周辺落としを繰り返したため、断面が汚くなっていますのできれいに彫って整えましょう。
↓こういう部分
今までのように、お耳を輪郭に沿って刻んでから、さらに背中の角を丸くします。
アームライトを動かして光の位置を変えたり、板を手に持って見やすい角度から見て彫ったりと、繊細に彫っていきます。この作業の時は力を使いません。それよりも細かい調整をしながら彫る繊細さが大事。
形が立ち上がる角度
先ほどちょこっとお話したように、背景から絵柄が立ち上がってくる角度によって見た目の印象がだいぶ変わってくるのが浮き彫りです。
断面図で見たとき、背景に対して絵柄が垂直に近く立ち上がると、立体感が強く見えます。
実際の作品ではこの部分は強めに立ち上げてます。
立ち上がりの角度をなだらかにすると…
立体感や存在感が控えめになり、奥の方にあるように見えます。
絵柄と背景の境界がくい込んで、絵柄が外側に膨らんだような形も彫れます。
絵柄が背景に対してずっと手前にあるように、浮き上がって見えます。
これらの効果を踏まえ、各部を彫っていきます♪
各部を彫り進める
シルエットに隠れていた輪郭線もどんどん彫っていきましょう。
まずは下図のようにあご下のラインと両前足の線を刻みました。
このあと、輪郭を挟んで一方を彫り沈めて高低差を出していくのですが…。
このように、形の前後関係を意識して奥にある方を彫っていきます。
一番手前の足と前景の部分を彫った様子↓
顎のラインは一筆の線ではなく、細かい線に分けて刻んで毛並み感を出しました。
続いてうさぎさんの後頭部の毛のフサフサを作ります。
こちらも奥に向かっていく形なので、立ち上がりの角度を滑らかにしました。
毛の流れに沿って凹凸を彫ります。
うさちゃんの脚元のところも、目立ちすぎないように彫っていきます。
やり方はいままでと同じ。輪郭を刻んで、前後関係を見て奥にある方を彫る。立ち上がりの角度を調節する、です♪
この後、緊張の面持ちで目鼻を彫りました。表情が決まるので一層集中して彫ります。
仕上げ
光に当てて確認しながら、必要に応じて陰影をなだらかにし、立ち上がり角度を調整します。
細かいささくれは木が乾燥するにつれだんだん取れてきますが、目立つやつは取っておきましょう。
浅丸刀(またはカマクラ刀)で毛並みをごく浅く彫っていきます。やり過ぎると汚くなるので注意!
全体が彫りあがりました。
この段階で、板の裏や四辺にやすり掛けをしておきます。制作中の傷や、値札シールの跡を消す、など…。
着色
水彩絵の具を薄く溶き、サッと下塗りします。
前から見たところだけでなく、立ち上がり面のところもしっかり塗りましょう🎨
木に絵の具を塗るときは木の表面にある細かい穴に絵の具が吸い込まれて色がうまく乗りません。
平滑な塗装面を作りたいときは穴をふさぐ目止めという作業をしますが、こういう作品作りの時はそこまでやらなくても大丈夫。絵具を重ね塗りしていけば目止めの代用になります。
ぼかしながら濃い茶色も重ねていきます。
白絵の具は最後に
うさちゃんの毛色は、白地なので白絵の具も重ねます。
最初に白を描いてから他の色を重ね塗りすると、下地の白が溶けて色が濁り、汚れるんです。なので白は他の色を塗った後、最後に重ねます。
瞳の着色
こちらは別作品の記録ですが、茶色で全体を塗ってから瞳孔の黒を重ねました。
瞳の部分はティッシュやつまようじで擦るとつやが出ます。
完成!
改めて、こちらが完成画像です✨
以上、浮き彫りの制作方法でした。ご参考になりましたでしょうか?
浮き彫りに慣れてきたら、立体の彫刻(丸彫り)にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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この記事を通して、皆さまの木彫りライフをお手伝いできれば幸いです。
それでは次のブログでまたお会いしましょう。ばいばい👋
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