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木を彫る前に必ずやること。「木取り」の説明です。

こんにちは!木彫りうさぎのパパ。ティムです。今日は木彫の最初の工程、木取りのポイントを実例付きで解説していきます。

木彫では、まず彫りたい木の塊を用意して、それに対して形を彫りこんでいきますよね。

素敵な木材を手に入れたら、さっそく彫りたい形を描き込んでいき…

ちょっと待って!いきなり描いちゃダメです!

ベテランの彫刻家がスイスイ彫っているように見えるのに、自分がやるとなぜかうまくいかない…。そんな時、実は最初の木取りの時点で差がついているのかもしれません。

今日は、普段うさぎさんを彫っている彫刻家の僕なりに木取りのポイントをまとめてみました。コレが絶対!ではないけど、考え方の参考になると思います。ではいってみましょう!

木取りによって変わる彫りやすさや保存性

木取りって何?と思った皆さんのために、サッと説明します。

絵を描くときに画用紙を縦横どっちに使うか考えますよね?ザックリ言うと木取りとは、木材を上下左右前後のどの向きに使うか、です。

下は僕がこれから彫る作品の例。

木材は木目の方向によって彫った感触が異なります。また、縦方向に割くような力に弱く、横方向からの力には比較的強いです。

木材に節やひび割れが生じていることがあります。節は硬くて彫りにくく、彫り進める方向がいつもと変わります。ひび割れは、のみで彫った衝撃や木材の乾燥と共にだんだん広がっていきます。

このような、彫りにくいところ、残したくないところに作品が入らないように、強度面も考慮して、事前に木を使う向きを決めるんです。それが木取りの役割👍

つまり…

木取りの目的

作品の仕上がりや彫りやすさを考慮し、完成後の保存性の良さにも注意して木材を有効に使うこと

ちなみに先ほどの木からこんな子が生まれました🐇

木取りの手順

詳しく説明する前に、全体の流れだけ説明してみますね。あとでこの手順に沿って解説します。

まず彫りたいイメージが出来上がったら、だいたい以下の手順で進めていきます。

  1. 木口を見つける
  2. 材を切り出す(おおまかに)
  3. 木目の向きや材の状態をチェック
  4. 底出し
  5. 材に彫りたい形を描く

細かいところは状況によって前後します🙃

木口(こぐち)というのは木を輪切りにした断面。底出しというのは、作品の底を平らにすることです。

それではここからは実際に僕の作品の例で写真を交えて説明していきます👍

図解、木取りのやり方

前段階として彫りたい形を決めます。今回は油土で簡単に試作を作ってます🐇

後ろにある木材にうさぎさんの形を描いちゃってますが、後に再検討し、変更してます。

その1 木口を見つける

まず、木材の目の向きを見分けましょう。さっきの木材の場合、

左手前と、右奥の反対面が木口です。

細長い木材の場合、素直に考えると断面積が小さい両端が木口になっていることが多いです。下図のように断面を見てバウムクーヘンみたいな木目の形だったらそこが木口です。

木口の例
木口の例

参考までに、下図のように直線状の木目は柾目(まさめ)といい、同心円をぐにゅーっと伸ばしたような模様が出ている木目を板目(いため)と言います。

柾目
板目

木口はどんな木でも硬いので、彫りにくいです。たいていの木材は細長いので、動物を彫ると木口が顔の正面になりがちなのですが、下の写真のように正面顔と横顔が木口にならないように取るのも一つの方法です。

なお、木は木目に沿って縦に割けるように割れやすいです。薪割りをイメージしてみて💭

完成後はもちろん、制作中の衝撃でも、木は簡単に割れてしまいます。

なので、木を使う向きを決めるときは強度も判断材料になります。

その2 材を切り出す

彫りたいイメージをすっぽり覆うように、直方体に木材をカットします。

今回彫る木は杉の柱材で、「背割り」という切り込みが縦にスパーっと入っています。

三面図を描きました。
正面図

(同じ柱材から別の作品を彫ったときの写真です)

背割りが入っている部分を取り除くため、縦に半分にカットしました。

そもそも、なぜ背割りが入っているかというと、木材が乾燥でゆがんだり、ひび割れたりするのを緩和するためです。特に木材の芯が残っていると歪みや割れが大きくなります。

これは大工さんだけでなく彫刻家にとってもやっかいなものなんです💦

芯が入っていない木材や、芯を横切るように中心でカットされた木材を選べば、木材の形が安定します。背割りは、どうせ割れるなら最初から割れた形に切り込みを入れてしまえばそれ以上割れない、という先人の知恵です✨

ちょっと脱線しちゃいました。材の切出しは、できれば芯を避けてやりたいね、というお話でした。

その3 木目の向きや材の状態をチェック

木材を隅々まで観察して、材の状態を見極めます。

木表と木裏

木口面からみたとき、木の外周に近い方を木表、芯に近い方を木裏と呼びます。

さっきの写真だと、木裏が上を向いていて、床に接している方が木表です。

木材が乾燥して反るときは木表が凹み、木裏が凸になるように反ります。

どちらかというと、木表から彫った方が仕上がりが整いやすいと言われています。

特に理由がなければ作品の正面が木表になるように取りますが、どうしても木表から彫ろうとこだわらなくても大丈夫。

ひび割れや節をチェック

例えば今回使用する材は木口面に放射状にひびが入っています。

カットしたばかりの反対側はきれいでした。

綺麗な方の面を上から見ると、まあまあ深そうなひびがあり…

こっちの節も気になるなー。

さて、どちらをうさぎさんの頭にするか…🤔

ひびはどこまで深く入っているか彫ってみないとわからないし、節も荒彫りの途中でカットしてみると新しく出てくることがあります。なので、今わかる時点でのリスクを考えて木取りしますが、思惑通りにならないことが多いです。

生きた木材を彫る醍醐味だと思って、楽しみましょう🎵

その4 底出し

木材の使い方が決まったら、底出しをやります。

今回の木材、床に置いたら少しぐらぐらしていたので、スパッと平面を出して、安定するようにします。人物の立像など、縦に長い作品は特に重要。

底出しのもう一つの目的は像の傾きを修正するためです。これは、ある程度彫り進んでから改めて行うことがあります。

底出しのやり方ですが、まず定規などでぐるっと360°直線を描き、やすりなどで線のところまで削ります。

赤い線が底にしたい線。黒い線はもう使わない全然関係ない線です。

底出し完了。まずまず安定しました

その5 材に彫りたい形を描く

材に三面図を描き込みます。頭や足などのパーツの位置に矛盾が無いように補助線を引きながら描きます。

これで、今回の作品の木取りが決定しました✨

作品を置いたとき、上面が木表です。小さなひびがある方の木口が顔側になりましたが、大きい方のひびを回避する方を選びました。ひびがあまり深くないことを祈ります…!

気になる節は底面にしました。うさぎさんの胸の辺りです。

僕は底面に、上から見た投影図を描いてます。なぜかというと、底面は彫り進めていっても線画が消えないからです。

これでようやく荒彫りの準備が整いました。木彫って、彫るまでの準備も大切なのですよ🍀

※後で気づいたんですが底面の耳の長さが間違ってます(立ち上がっている方の左耳が短くならなきゃダメ)。あぶねーあぶねー😯

まとめ

木彫りの大切な工程、木取りについてまとめてきました。

この後のこぎりでばっさばっさとカットしていき、その過程で皆さんがイメージするような「片手にハンマー、片手にのみ」の彫刻作業が始まります。

なお、今日ご紹介した制作の続きはこちら↓

次の記事はもっと具体的な、「木を彫る」方法です。この記事をまず読んでくれた皆さんには安心しておススメできます✨

彫る方向を間違えると木材が割れるので、失敗しない方法や、木目を理解してきれいに仕上げるためのノウハウをまとめています。

お時間許す限り、ゆっくり色々見ていってくださいね。それでは今日の記事はここまでです。最後までありがとうございました。またねー👋

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