ティムです。今日は木彫り作家らしく木材の特徴をまとめた記事を作りました。
僕が今まで彫ってきた木について、見た目や加工のしやすさ等を彫刻家目線で解説します。
書き出してみると思ったよりたくさんありました💦 だてに彫刻家じゃない??
一応、何かの形をちゃんと彫ったことがある木と、軽作業で加工したことがあるよ!という木を分けて書きます。
木にはひとつひとつに個性があるし、たまたま僕が出会った材についての主観にすぎませんが、参考にしてくださると幸いです。
今日紹介する木の一例です。次の目次と合わせて参考にしてください。写真にない木もあるよ😃
彫ったことがある木材
まず、彫刻作品(丸彫・浮彫)で取り扱った材についてまとめていきます。
檜(ヒノキ)
木肌がキレイで彫りやすく、僕の中ではキング・オブ・彫刻材です。
くしちゃんふせちゃんの姉弟はこの木から生まれたよ。
上の写真のうさちゃん達は体の大部分が素材本来の色です。やや黄色味を帯びた地の色に対して、赤みのある年輪が細かく入ります。
比較的軟らかい木ですが強度も十分。縦に割れやすいものの、割れ方が素直で予想通りに仕上がるので加工性はとても良いです。
※木口面だけは硬くててこずりますがそれはどの木も一緒です。
順目でちゃんと彫るときれいな彫り跡が出ます。紙やすりなどを使うよりも、彫ったまま仕上げが好きです。
香りもナチュラルで好ましいです。檜はお風呂に使いますものね♨
下の写真。この子も檜から生まれました。
木口が上になるように木取りしたので、目鼻は楽に彫れました。
透明色で全面に着色してます。
桂(カツラ)
当ブログのアイドル、ぷいちゃんはこの木から生まれました。
桂の木はやや硬いですが緻密で彫刻向きです。木版画でもよく用いられる木で、それだけ形が崩れず扱いやすい木ということですね。
木肌も整ってきれい。濃いめの茶色が素朴な風合いでいい感じです🍀
年輪はあまり目立ちません。彫刻材としてみたとき、その方が形が見やすく好まれるんです。ぷいちゃんの鼻の辺りのアップ写真がこちら↓
ぷいちゃんの頭はちょっとだけ紙やすりをかけてます。桂材は彫って良し磨いて良し✨
榀(シナ)
おだんごちゃんは榀から生まれた子。
模様は色鉛筆ですが、地の色は無着色です。仕上げは紙やすりで起毛させてます。
とても軟らかい木です。丸彫り彫刻をやるなら自信をもっておすすめできる初心者向けの木。サクサク彫れて楽しいですよ🎵
北米産のものはバスウッドといいます。性質もよく似ています。
明るい色の木で、かわいい動物彫刻にはぴったりだと思います🥰
おだんごちゃんは紙やすりをかけているからというのもありますが、それを差し引いても年輪が目立たない木です。
木肌の美しさは折り紙付き。シナベニヤって聞いたことありません?榀の木を貼り合わせて作ったベニヤ板だからシナベニヤ。
あと、軽い木です。一般に色が薄い木は軟らかくて軽い(比重が少ない)です。あとで紹介する真っ黒な黒檀は激重、激硬です!
楠(クスノキ)
うちの子レイ様が生まれた木ですね。
彫刻材として最もメジャーな素材の一つかと思います。
理由はいくつかありますが、太く大きな材を入手しやすく、大作向きであること、材が硬く緻密で、仕上がりがきれい、などが挙げられます。磨いたら光沢が出ますよ✨
少し硬いですが荒彫りも細密彫刻もこなせます。
レイちゃんは白い「との粉」で着色してますが、色がついていない本来の楠の木肌が底面に出ています。
黄色と薄茶色のミックス。部分的に緑がかった木目が出ます。
そして楠の最大の特徴は、その香りです。
楠は樟とも書き、樟脳の原料です。精製した樟脳よりも、より「木」っぽい香りですね。
彫っている最中は香りが強すぎて体質によってはかぶれます。彫りあがった後、落ち着いてくると自然な香りになって心地よいです😊
樟脳の成分なので虫にも強いです。保存性が高いのも作品向きですね。
杉(スギ)
プリンちゃんは杉から生まれました。
建築材として主流の杉材ですが、彫刻の素材にするにはちょっと難易度が高いです。
軟らかいのですが縦に割れやすく、木の構造を良く知ってないと不用意に割れてしまいます。
また木目がはっきりしてきれいなのですが、木目と木目の間の白い部分がもろく、彫っているうちに崩れてしまいます。
なのでプリンちゃん制作のときも大苦戦してます💦
とはいえ、木目の美しさ、素朴な香りなど、とっても魅力的な木。シンプルな形の彫刻に向いていそうです。
こちらは紙やすり仕上げにしたシェンナちゃん(仮)。
木目が目立つので、着色で多少落ち着かせました。
橅(ブナ)
ブナちゃんが生まれた木です。ブナは森の女王👸
背中の方は紙やすりで丁寧に磨きました。ブナの木目の美しさを引き出す仕上げです。
ブナちゃんも白との粉をかけてます。底面の色はこんな感じ。
白っぽい色で、木目が良く出て、細かい斑点模様が入ります。
広葉樹なのでけっこう硬いです。彫りにくいですが、ご覧の木肌なのでやりがいがある木です!
硬さと割れやすさは別ですが、ブナは硬くて割れにくい木です。細密彫り向きだなーと思います。
榧(カヤ)
こちらはももかちゃんが生まれた木。
彫る前はこんな感じの木です。
黄色い木肌がきれいです。木目は細くて色も薄いです。
柔らかくて均一で、彫りやすいんですよ。実際、古い仏像にもよく利用されていました。
割れやすさは普通かなぁ。気を付けていればなんてことはないです。
独特の香りがします。嫌いではないですが、独特。薬っぽい感じ?
良材が入ったら是非キープしたい彫刻向きの木ですね。けっこうおすすめです✨
朴(ホオ・ホウ)
レリーフを彫りました。
もともとは色が緑っぽく薄汚れたように見えるので好きではなかったのですが、食わず嫌いせずに彫ってみたらとても彫りやすくて感動しました✨
緻密で均一な質感、適度な硬さが彫りやすさの理由です。木目はややはっきりしていて、辺材(木の外回りの方)は白っぽくなります。
なんというか、しっとりと身が詰まっていて粘りを感じる材で、彫っている最中に割れてしまうリスクが低い印象です。
個人的には、紙やすりの起毛仕上げにしたらふわふわになってかわいくなりそう🥰
栓(セン)
バッグチャームを彫りました。
どこか「和」を感じる素朴な木。
木目がはっきりしていて、カラッとしたドライな質感です。
このチャームのように細かい彫刻をやろうとすると、木目によって硬さが変わるのでちょっと難しいですね。やや不均一なので順目で彫っても彫り跡が整いにくい欠点はあります。
ですが天然木らしい素朴なぬくもりに満ちた樹種なので、それを生かして簡単な加工の小物を彫るのには向いていると思います💡
着色して欅の代用にするらしいです。丁寧に磨いて木目を活かしてみたい木でもあります✨
ハードメープル
雑誌の読者プレゼントのお仕事で制作しました。マグネット付きミニレリーフです。
元々の材はこんな感じ。
淡色の美しい木材です。ブナ同様、白いけど硬い木です。
この材では年輪の木目と直交するように、縦方向に光沢感の異なる縞模様の杢が出ています。
材の意匠性もさることながら、緻密で彫りごたえがある材質のため、細密彫り向きです。先ほどのミニマグネットもミリ単位の細かい彫刻を施しています。作例のように円形の枠を彫ったときにも崩れたり欠けたりすることがありませんでした。
後日、この素材でペーパーナイフを作りました。
木肌がきめ細かく硬さもあるので、刃を研ぎ澄ましても刃こぼれしません。ペーパーナイフには最適の素材だと思います!
なおこのペーパーナイフには仕上げに刻印を打ってサインを施しているのですが、ハードメープルならクッキリした印影が出ます。
ハードメープルはメープルシロップが取れる木らしいですよ😋
チーク
先ほどご紹介したペーパーナイフの試作素材から。
形は最後まで彫れたのですが、肌目が粗かったので刃を研げば研ぐほど刃こぼれが出てしまい、泣く泣く製品化を断念しました。
とはいえ、この素材は魅力満点でこのままボツになるのは大変惜しく、何かの機会で採用したい木材です。
一般にチークは世界的な高級木材。油分が豊富で経年変化すると飴色の艶が出ます。磨いたら美しく仕上がり、微かな香りもします。温かみのある色合いもきれいですよね✨
銘木のなかでは比較的加工が楽で、サクサクいけます。ただ研磨すると木の粉が油分のせいで手にまとわりつくような独特の感触になります。
エゾ松
グッズ製作の素材にしました。松の木は一般にパイン材と呼ばれる木です。DIYでお馴染み。というか、松を英語でパイン🍍
針葉樹なので割れやすさは気にする必要がありますが、それ以外は軟らかいし、とても彫りやすい木です。
松には赤松、ラジアータパインなどいくつか種類がありますが、こちらのエゾ松は白くて、松の割には節が少なく均一な質感でした。
ちなみにこの木でバッグの持ち手部分を作りました。彫った直後の着色前と…、
ニス塗りして完成後。
山桜(ヤマザクラ)
これ以降は昔彫った木なので画像が少ないですがご了承ください。
ヤマザクラは友達のうさぎのネームプレートを彫ったときに採用しました。
赤みを帯びた木肌です。色は桂に少し似ています。
材は割れやすいので彫り方に注意です。ただ重量感があり、磨くと木目や艶がキレイに出るため高級感があります。
黒檀(コクタン)
真っ黒で硬く重い南洋材。昔これでペンダントトップを作りました。
すごく緻密なので、磨くとこのようにピカピカになります✨
磨き方はこちらを見てね。
彫刻材として使うときは加工の難しさを覚悟してください!
とにかく硬くて彫りにくいです。道具の方が壊れます。材が緻密過ぎて水に沈むことも(笑)
あまりに硬いので縦に割れる心配は比較的少ないです。そこは利点ですね。
黒檀は大変貴重なので、市場に流通しているのはほとんどが薄い板か小さな木片です。密度の高さを生かしてアクセサリー的な小ものを彫るのに向いてます💍
銀杏(イチョウ)
先日、小さな材を入手しました。何か彫ったら更新します👍
初めて触れたのは学生の頃で、もっと大きな作品を彫りました。黄色くて軟らかい木です。イチョウの木は雄株と雌株があり、僕が彫ったのは雄株。雌株はぎんなんができる方ですが、やはりあの臭いがするみたいです😀
僕が彫ったやつは雄株だからか、そんなことはなかったので、気になる人は雄株がおすすめ。
僕がこの木を彫ったとき、製材されていない丸太を彫ったんです。なので乾燥が不十分で、それがトラブルになりました。
木材はよく乾燥させてないと激しくひび割れます。あの時の銀杏は荒彫りの時に彫ったかけらを絞ると水が出てきたくらい。
銀杏は色と質感がふんわりしていいて、榀に通じるものがあります。榀よりも黄色味が強いかな。あと、硬い部分はしっかり密度感もありました。
花梨(カリン)
こちらも学生時代に彫った木。赤みがかった色で、場所によっては深紅になります。密度が高く磨くと光沢が出る南洋材。黒檀ほどではありませんが、花梨も硬い木です。
この頃は赤みが強い花梨をあまり見かけなくなりました。オレンジ色に近い材が多くなりましたが、それでもきれいな色ですよ。
軽い加工をしたことがある木材
彫刻とまでは言えませんが、切った、磨いた、など、何らかの軽作業で触れ合ったことがある木についてコメントしてみます。
ウォールナット
私物のジャケットにチャームとして取り付けています。紙やすりで#800くらいまで磨き、オイルとクリアワックスで仕上げました。無着色です。
濃いチョコレート色で光沢があり、銘木と呼ばれる木です。乾燥してくるとピンク味を帯びてきます。上のやつはワックスを強くかけたので濡れた色のままなのですが、乾いたピンクっぽい感じもなかなか味があります。
硬いので加工は難しいかもしれません。
欅(ケヤキ)
国産の硬い木代表、欅(笑)
上の写真の材はキーボードのリストレストや、撮影や制作の時にいろいろな段差として使ってます。紙やすりで磨き、オイルとワックス仕上げ。こちらも無着色です。
欅はオレンジの木肌、はっきり目立つ木目がとてもきれい。工芸品に重用されます。
ただし硬く加工は難しい部類に入ります。独特の臭いがするので個人的にはそこだけ苦手です。でも見た目の質感はとても美しく、レリーフなどで挑戦してみたいな。
槐(エンジュ)
国産材には珍しい濃い色の木です。
磨くと艶が出る木で、研磨サンプルを作ってみました。
紙やすり800番まで磨いて、仕上げに普通紙にこすりつけて光沢を出しました。
無着色、オイルもワックスも使っていません。
環孔材で、木目に沿って道管(水分の通り道)が集中するので、その部分が凸凹しています。
接写してみました。
貴重ですが質感が美しい木材です。小物を彫ってみたいですね。
パドック
先ほど紹介した花梨に近い種ですが、一般にパドックと言えばアフリカ産の木材です。花梨は東南アジア産。
パドックの木片を入手しました。
赤みが強く硬い木です。磨くときれいなので、軽く銀杏切り風にカットしてから研磨してみました。
最初にのこぎりで角をカットしてから、曲面を彫刻刀・やすりで作りました。硬い、硬い、と覚悟してましたが意外と加工しやすかったです。少なくとも黒檀よりは(笑)
磨いた質感には高級感があります✨
シャム柿
ハードメープルのところで紹介したペーパーナイフの試作品として、素材を検討中に触った木です。
濃色で硬い木材。黒檀に似ています。黒檀も種類によっては縞模様ができますが、シャム柿の方が模様がはっきり出ている材をよく見かけるイメージです。
残念ながら製品化に至らなかった原因として、硬いゆえの脆さがありました。割れやすい素材です。というか、あまりに硬いので加工に強い力が必要なので、その力に対して耐えきれずに割れる、といった感じでしょうか。
おわりに
以上、過去にご縁があった木をいろいろ紹介してみました。
これから扱う木材の種類が増えてくるにつれ、内容を増やしていきます。将来的には充実した木材図鑑みたいに育てたいです。
木の彫り方についてはこちらの記事を見てみて。
との粉の話とかしたから、こちらも参考になるかも。
それではみなさん、今日はここまで。またお会いしましょう。ばいばーい💨
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